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思いやる力 大人の関わり方

思いやりを育てるには、「優しくしなさい」よりも先にできることがある

子どもが友達のおもちゃを取ってしまう。 小さい子に強く当たる。 きょうだいに譲れない。 泣いている友達を見ても声をかけない。 こうした場面で、 大人はつい「優しくしなさい」 「相手の気持ちを考えなさい」 と言いたくなります。

でも、 命令で思いやりが育つのなら、 子育てはもっと簡単です。 ミエタネの別の記事「思いやる力とは」 では、 思いやりは行動の量ではなく気づきの瞬間に表れると触れました。 では、 その気づきを支えるために、 大人は何ができるのでしょうか。

こんな場面、 ありませんか

公園で、 子どもが他の子のおもちゃを取ってしまう。 注意すると、 さらに頑なになる。

家で、 妹がおもちゃを取られて泣いている。 兄に「貸してあげなさい」 と言うと、 「これは僕のだから」 と返ってくる。

きょうだいで遊んでいて、 上の子が下の子に強く当たる。 「お兄ちゃんなんだから優しくしなさい」 と言うと、 「お兄ちゃんだって嫌なときがある」 と返ってくる。

園や学校で、 友達が泣いていても、 我関せずという顔をしている。 「優しい子になりなさい」 と先生が言っても、 表情が変わらない。

こうした場面で、 大人の言葉が届きにくいのには理由があります。

大人がつまずきやすいポイント

思いやりを育てたい場面で、 大人がしてしまいがちなこと。

  • 「優しくしなさい」 と命令する
  • すぐに謝罪させて場を終わらせる
  • 「あなたは意地悪」 と人格を否定する
  • 相手の気持ちだけを考えさせて、 本人の気持ちを置き去りにする
  • 「お兄ちゃんなんだから」 「女の子なんだから」 と役割で迫る

これらは、 子どもの気持ちを飛ばしてしまう関わりです。 子どもは、 自分の気持ちを大人に飛ばされた経験を重ねると、 他者の気持ちに気を向ける余裕がますますなくなります。

子どもの中で起きていること

子どもが他の子に強く当たるとき、 中で起きているのは、 多くの場合「自分の気持ち」 が大きすぎる状態です。

自分が使いたい、 自分が悲しい、 自分が悔しい、 自分が認められたい。 こうした感情が大きいとき、 相手の気持ちまで余裕が回りません。 大人でも、 疲れているとき ・ 怒っているとき ・ 焦っているときには、 周りの人への気配りが落ちます。

子どもは、 そうした感情の調整がまだ未熟です。 だからこそ、 自分の気持ちが先に立ってしまい、 相手の気持ちに気づくのが後になります。

「思いやりがない」 のではなく、 「自分の気持ちで頭がいっぱい」 という状態を、 まず理解する必要があります。

関わり方の基本方針

思いやりを育てる関わり方は、 4 つのステップで整理できます。

  1. まず子ども自身の気持ちを受け止める
  2. 次に、 相手の気持ちを一緒に想像する
  3. すぐに正解を言わせようとしない
  4. 小さな気づきを認める

順番が大切です。 子ども自身の気持ちが受け止められていないまま、 相手の気持ちを考えさせても、 言葉は届きません。 「あなたも使いたかったんだよね」 と一度受け止めてから、 「相手の子は、 どんな気持ちだったかな」 と問いかける。 この順番で初めて、 子どもは他者の気持ちに目を向けられます。

具体的な声かけ

子ども自身の気持ちを受け止めるとき:

  • 「あなたも使いたかったんだね」
  • 「悔しかったんだね」
  • 「驚いたんだね」

相手の気持ちを一緒に想像するとき:

  • 「相手の子は、 どんな気持ちだったと思う?」
  • 「もしあなたが取られたら、 どんな気持ちかな?」
  • 「あの子の顔、 見えた? どう感じた?」

気づきを認めるとき:

  • 「気づけたこと自体、 大事だね」
  • 「相手の顔を見ていたね」
  • 「ちゃんと感じてくれてありがとう」

次の行動を考えるとき:

  • 「次はどう伝えたらよさそう?」
  • 「どうしたら、 二人とも遊べるかな」

これらは、 正解を出させるための質問ではなく、 一緒に考えるための問いです。 すぐに答えが出なくても、 一緒に考えた時間そのものが、 思いやる力の入口になります。

避けたい関わり

  • 「優しくない子だね」 ( 人格否定 )
  • 「相手の気持ちを考えなさい」 と責める ( 子ども自身の気持ちが置き去り )
  • 「とにかく謝りなさい」 だけで終える ( 形だけの謝罪は気づきにならない )
  • 本人の気持ちを聞かずに加害 ・ 被害だけで判断する
  • 「お兄ちゃんなんだから」 「お姉ちゃんなんだから」 ( 役割で迫る )

これらは、 大人を責めるためのリストではありません。 忙しい場面や疲れている時には、 つい言ってしまう瞬間があります。 翌日 ・ 翌週に、 一つだけ別の関わりを試せれば、 それで十分です。

自分の気持ちを大切にされた子が、 相手の気持ちに目を向けられる

ここまでの話を一言で言うと、 思いやりは「自分の気持ちを大切にされた経験」 の上に育つ、 ということです。

自分の悲しさを認めてもらった子は、 友達の悲しさに気づきやすくなります。 自分の悔しさを受け止めてもらった子は、 友達の悔しさを想像しやすくなります。 自分の「ほしい」 を一度認めてもらった子は、 友達の「ほしい」 にも気を向けられます。

逆に、 自分の気持ちが置き去りにされ続けた子は、 他者の気持ちまで意識を回す余裕を持ちにくくなります。 「優しくしなさい」 という言葉は、 自分の気持ちを大切にされた経験の上に乗って初めて、 子どもに届きます。

まとめ

思いやりを育てるには、 「優しくしなさい」 と言うよりも先に、 子ども自身の気持ちが大切にされる経験が要ります。 自分の気持ちを受け止めてもらった子どもは、 少しずつ相手の気持ちにも目を向けられるようになります。

命令で思いやりは育ちません。 でも、 一緒に気づき、 一緒に想像し、 小さな気づきを認める関わりの中で、 子どものつながる力は確実に広がっていきます。

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